初めてアルバイトをしたのは、中学1年のときだった。
当時、小遣いは月に500円ほど。
母親からもらってはいたが、
「無駄遣いはするな」
と、毎回くどいほど指導が入るのが、正直うっとうしかった。
そんな折、私は鉄道模型という、実に厄介な趣味に出会ってしまった。
小さな汽車(真鍮製)が一台5000円ほど。
月500円の小遣いでは、ほぼ1年我慢しなければ買えない。
──これはダメだ。
そう思った私は、**「自分で稼ぐ」**という、当時としてはわりと自然な発想に至った。
13歳の夏。
新聞配達という選択
同級生の中には、すでに何人かアルバイトをしている者がいた。
ほとんどが新聞配達で、夕刊だけなら中学生でもOKだった。
そのうちの一人に頼み、新聞屋に連れて行ってもらった。
主人に頭を下げると、拍子抜けするほどあっさり「明日から来い」と言われた。
採用である。
初日、胸ドキドキ
初日は、主人の後ろを自転車でついて回るだけだった。
約40件ほどの配達先。
初めて行く家、知らない道。
「本当に覚えられるのか?」
胸がドキドキしたのを、今でもはっきり覚えている。
二日目も同じ。
ひたすら主人の背中を追いかけるだけだったので、正直ほっとした。
三日目、そして叱られる
そして三日目。
「今日は一人で行け」
いきなりである。
がむしゃらに配った。
順番もあやふや。
道も怪しい。
とにかく必死だった。
翌日、主人に呼ばれた。
「昨日、未配達があったぞ」
叱られた。
言い訳はできなかった。
失敗は、今も覚えている
今振り返ると、
未配達があったことよりも、
その失敗を自分で引き受けた感覚のほうを、強く覚えている。
誰も代わりに謝ってくれなかった。
誰も「仕方ないよ」とは言わなかった。
次はどうすればいいか、
どうすれば失敗しないか、
必死に考えた。
アルバイトは当初の約束どおり3か月続けた。
月平均2000円程度だが初めての所得を経験した。(ラーメン1杯50円時代)
一人で電車乗って三河島の模型店に行き獲物をゲットした。
得たものと感想
早いときに良い経験をしたものだ。
社会との付き合い方、大人との会話。
そして「失敗の仕方」
今の子どもたちは、当時とは比べものにならないほど守られている。
それ自体は悪いことではない。
むしろ社会の進歩だ。
ただ、思うのは、
失敗する前に、先回りして止めすぎてはいないかということだ。
転ぶ前に手を出す。
失敗しそうになると中止。
結果として、失敗もしないが、挑戦もしない。
もっとも、
こうして書いている爺さん自身、
いまだに失敗ばかりしているのだから、
偉そうなことは言えないのだが。

